2019.09.06
消費税・軽減税率導入後の価格表示方法
相談[相談]
私は個人でパン小売店を営んでいます。
当店にはイートインスペースを設けているため、今年10月1日の消費税率引き上げ以後は、パンの持ち帰りについては8%、イートインスペースでの飲食については10%の税率が適用されるかと思います。
ただ、店内に表示する値札やPOPを、8%と10%の2通り作成するのは非常に手間がかかるため、どちらか一方の税率だけを用いた価格表示にしたいと思うのですが、消費税法上、この価格表示方法は認められるのでしょうか。
[回答]
ご相談の、8%または10%どちらか一方の税込価格だけを表示する方法は、消費税法において認められています。ただし、ご留意いただきたい事項がありますので、下記解説をご参照ください。
[解説]
1. 消費税法上の価格表示に関するルール
消費税法では、事業者は、不特定多数の人に商品の販売等を行う場合において、あらかじめその価格や料金等を表示するときは、消費税額を含めた価格を表示(総額表示)しなければならないことと定められています。(なお、令和3年3月31日までの間では、一定の措置を講じることで税込価格の表示を要しない措置が別途講じられていますが、ここでは割愛します。)
2. 8%または10%どちらかの税込価格だけを表示することの消費税法上の可否
今回のご相談の場合のように、今年10月1日からの消費税軽減税率導入以降、販売する商品等の税込価格について、8%または10%どちらか一方の税率のみを用いた価格での表示を行おうとする場合、上記1.の消費税法の規定に違反してしまうのではないか、という疑問が出てきます。
この疑問に対しては、8%または10%のどちらかの税込価格を表示しないことは、消費税法違反にはならないこととされています。
その理由は、上記1.の規定は、あくまでも「あらかじめ」価格を表示する場合のみ適用されるものであって、そもそも価格を表示しない場合には適用されないためです。
3. 留意点
上記2.のとおり、8%または10%どちらか一方の税込価格だけを表示することは消費税法違反にはなりません。
しかし、今回のご相談の事例において、仮に、パンの持ち帰り価格(税率8%)だけを店内に表示した場合には、来店客にイートインスペースでの飲食価格(税率10%)もその表示された価格と同じであるという誤解を招く恐れがあります。
このような事態を避けるには、税率8%の税込価格だけを表示する場合であっても、「イートインスペースでのご飲食の場合には、消費税率が異なりますので、別価格となります。」 などの注意文を店内に掲示したり、メニュー表に記載したりすることが必要になるのではないかと思われます。
今回の事例のように、軽減税率導入以後は、店舗運営について様々な配慮が求められることが多くなると考えられます。
顧客とのトラブルやクレームを避けるためにも、価格表示方法をはじめとする店舗運営方法について、できれば軽減税率導入前に、ぜひ当事務所へご相談ください。
[参考]
消法63、平成30年5月18日消費者庁・財務省・経済産業省・中小企業庁「消費税の軽減税率制度の実施に伴う価格表示について」、不当景品類及び不当表示防止法5など
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